治療方針
福山医院は敢えてにこれといった専門性をうたってません。待合室をみれば、風邪の子供がいたり、胃腸の悩みの人がいたり、一人で住んでいる高齢者が社会的な問題をかかえて相談に着たり、高血圧の人がいたり、糖尿病の人もいたり、アトピーで体がかゆい人がいたり、喘息の人がいたり、実に多彩な患者であふれています。じつに平凡な町医者の風景です。これが私の理想です。どんな病気でも治せるスーパードクターは理想的ですが、おそらくドクターKとかブラックジャックとかはどこにもいません。町医者は健康のコンサルタントと思っています。もちろん、専門性が必要な病気であれば、すぐにどこのどんな病院にでも紹介します。いつまでも引きずるようなことはしません。よく、こんな症状があるのだが、どこにかかればよいか判らなくて来ましたという患者さんもいます。私にできることであれば治療しますし、ちょっと特別な病気であれば一番適切な専門医にかかれるように手助けをします。専門医は時として自分の専門領域しか見ていないことがあります。臓器だけをみて人間一人として見てないことがあります。専門医としての治療はガイドライン的には正しいのだが、その患者さんの背景を考えると「とんでも治療」になっていることをしばしば見かけます。家庭医として、専門医と患者さんの橋渡しとして相談にのります。無論、私にも専門性があり、病院勤務医時代には専門医として活躍しておりました。そうした領域でも適切なアドバイスをしたいと考えています。
漢方薬について
福山医院では風邪の患者さんにしばしば漢方薬も処方されます。もちろん普通の薬も処方します。なぜ漢方薬を併用するかといえば、とてもよく効くからです。一般薬の風邪薬は、抗菌剤・抗ヒスタミン剤・消炎酵素製剤・鎮咳去痰剤・鎮痛解熱剤の組み合わせだけです。いわば、市販の風邪薬とそれほど違いはありません。もちろん、病状に応じたさじ加減はありますが、それだけでは治るとは思えません。風邪には特効薬はないとか、開き直って断言する先生もありますが、私はそうは思いません。なかには、どんな風邪であってもPL顆粒という総合感冒薬を馬鹿の一つ覚えのように処方する医師もいます。それで改善するのはほんの一握りの患者だけです。適切な時期に適切な処方をすると風邪はこじれることなくすっと治ります。しかし、菌の毒性が強過ぎる場合は必ずしも治ると断言できませんが、それでも離間期間を短縮できます
。 漢方薬は決して万能ではありませんが、風邪症状と胃腸薬・婦人科的なホルモンのバランスの乱れ・に対する薬では一般薬にはない多彩な薬がありこれがとても有効な疾患があります。
高血圧の治療について
高血圧(病気)にははいろいろな原因があり、原因に応じた治療法がある。したがって診断学はとても重要であり、診断がつくまで検査を徹底して行い、診断が確定するまでは治療しない。こうしたアプローチはとても論理的で説得力がありますが、実践的とは言えない側面があります。いつまでも不必要と思われる検査ばかりが続いて、一向に治療してもらえない。こうした学派はドイツ学派とも呼ばれたりします。一方、高血圧(病気)の原因はいろいろあるだろうが、診断学に固執せずに現象を改善する(つまり高血圧をさげて正常血圧にする)ことのほうが重要で、結果的に患者は長生きする。これはアメリカ学派と呼ばれて、実践を重視するアメリカ人気質が感じられます。実は、現在の医学で着実に成果を上げて結果を出しているのはアメリカ学派でした、高血圧治療ガイドラインは後者の思想で構築されております。有害事象をすみやかに改善する。一見すると対処療法的ですが、これはとても重要で、高い血圧を正常粋に下げることにより、脳卒中や心筋梗塞による死亡率を著しく改善することが世界的な調査で統計的に証明されています。高血圧治療ガイドラインを乱暴に要約すれば、このようになります。
もちろん、病気の種類・原因によって降圧剤の種類は変わります。福山医院では常時20種類以上の降圧剤を常備して治療にあたっています。私が医師になった頃はわずか数種類の薬しかなくて、治療はわずかな種類の薬の量の増減しかありませんでした。当時は血圧が下がらなければ、患者が悪い。塩の摂りすぎと言われました。幸いなことに現在では多様な薬が開発されて、治療できない高血圧はないとまで断言できるようになりました。
FAQ よくあるお問い合わせ
ジェネリック薬とは何ですか?
ジェネリック薬品とは特許が切れた薬品を他社が作って販売している薬のことです。薬には薬品の構造の特許と製造方法に関する特許の二つの特許があります。ジェネリック薬品にはどちらかしか特許が切れていない商品も存在します。この場合は、製造方法が違うので、不純物の含有量などで同じ品質にはならない可能性もあります。もちろん、ジェネリック薬品と正規品とでは薬としての有効成分に関しては差はありません。しかし、薬は有効成分が同じかどうかだけではありません。薬の品質には不純物の量、有効成分の含有量のばらつき、錠剤などがどこで溶けるか、など品質が重要な役割を果たします。たとえば、高血圧治療薬として世界で一番使用されている製剤にアムロジンがあります。この薬には数多くのジェネリックへ製品があり、およそ20社が製造しています。ではこれらが皆同じ薬かといえば少々疑問があります。薬は腸内で溶けて吸収されて初めて有効に作用します。中にはほとんど解けずに排出されてしまう製品もあるようです。もちろん、正規品以上の品質の薬もあれば、どうかというレベルの製品も混じっています。ジェネリック薬品には正規品薬品と違い承認手続きはそれほど厳しくありません。使用者には良いジェネリックか否かの判断は難しいと思います。薬局にとっても事情は同じです。一般的にあまり売れない(売れない製品=品質がよくないとは限りませんが・・?)薬ほど納入価格が低いので薬局には利ざやがあります。ジェネリックを利用するには、こうした不良品をつかんでしまうリスクもあります。実際に調剤薬局の薬剤師さんにジェネリックはどうですかと聞いてみると、多くの場合、良くないと思いますとの返答が返ってきます。しかし、国によってジェネリックの処方割合が低いと診療報酬が低くなる現状では薬局としてもジェネリックを患者に勧めざるをえないと思います。しかも不思議なことにジェネリック製品同士でも薬価に差があります。薬価は国が決めますので、もし差がないなら、どうして同じジェネリックの仲間なのに薬価に差があるのか合理的な説明が欲しいとところです。
ジェネリック薬推進の行き着くところは?
ジェネリック薬が安くて品質が良いなら、これは一般消費者にとって喜ばしいことです。もちろん国の財政にも良いでしょう。しかし、一歩立ち止まって考える必要があります。今の日本では薬に関して「非関税障害」のように外国の製薬会社は無条件に国内参入しているわけではありません。薬の承認に関して、外国企業単独では承認が得られないようにしてあり、ほとんどのケースで国内製薬会社と合弁会社つくり、その会社の製品が承認されている現状があります。つまり、海外の企業は単純には締め出されているわけです。しかし、最近TPPが調印されました。つまり、こうした障害は原則的に認められなくなります。つまり、海外の企業は自由に国内で販売できるようになります。現状では中国やインドはTPPに参加していませんが、中国の企業がシンガポールとかマレーシアに企業を作り、そこから輸出してきたら阻止する手立てはありません。つまり、多くの弱小ジェネリック企業は、中国やインドの安い企業の製品に淘汰される運命にあります。その場合に危険な薬が混入しないという保障はどこにもありません。
同じことは100均の製品にも言えます。100円ショップで買い物をするととても得した気分になります。ここでもよく考えてください。もし、傘が100円で売られていたら、あたなの勤めている企業が傘を作ってもそれは、いくら品質が良くても100円相当の値打ちにしかならないことを意味します。安物を買うのはことは、自分の仕事の価値(値段)も安くなることを意味します。他人の仕事の価値を見くびれば、自分の仕事の価値も見くびられることになります。100均の行き着く先は、価格競争に負けて日本の企業が倒産して、その結果、あなたもリストラされて職を失うことになります。これは仮定の話ではありません。現に日本有数のハイテク企業であったシャープでさえもが赤字転落して、多くの従業員がリストラされています。つまり、産業政策としてジェネリック推進は正しいのかということです。良い製品を価値に見合った値段で購入するのは、ある意味、フェアトレードと同じです。昔の、田舎の村の互助精神と同じです。権兵衛さんが鍬をつくったら、仲間だから、ちょっと高くても買ってあげよう、そのかわり太郎さんはうちの米を買ってくれる。権兵衛さんは金太郎さんのお菓子を買っている。つまり経済の好循環です。助け合いです。ここに、強欲でけちな金野毛爺さんが他所で子供やら食いっぱぐれを集めて、奴隷のようにこき使って安いけど品質の悪い米やら、粗悪な鍬やら、混ざり物でごまかしたお菓子を持ち込んだらどうなるでしょう。村の経済は崩壊です。
スイスでは産業政策として最低賃金は他のどこの国より高く設定しています。つまり、物価は安くなりません。しかし、賃金は高いので、海外の製品は相対的に安く購入できることになります。輸出企業には不利かもしれませんが、これはアップルなどの会社が参考になります。ご存知のようにアップル製品は値引きがありません。どこで買っても定価販売です。要するに製品に価値があれば高くても売ることができます。製品に価値がないから価格競争に巻き込まれて、泥沼に陥る訳です。スイスはベンチャー企業などが育つように支援しています。日本も、これからの産業政策を考えると、安いジェネリックを推進するなど「愚の骨頂政策」をやめて、高品質・高付加価値・高価格の製品で勝負できるように支援する政策に変更すべきです。
もちろん、薬の値段が不当に高くて、独占企業が大もうけしている批判は、ある意味では正当です。それなら、ジェネリック推進などやめて、正規品の値段を切り下げたら良いだけです。それでもジェネリックが売れるならそのジェネリックはオリジナルを超える品質なんだろうと思います。現に正規品を作っている会社が子会社を作って、そこから正規品とまったく同じものをパッケージだけ変えて販売しているケースもあります。ジェネリックに自社の市場を荒らされて売り上げが落ちるなら、自社からジェネリックを出したほうが市場を守れるからです。これをオーソライズド・ジェネリックと呼びますが、そんなことをするなら、厚生労働省が正規品の薬価を切り下げれを認めれば良いだけです。不思議なことに薬価は企業ではなくて厚生労働省の役人が決めています。現状では企業は自由に薬価を切り下げれません。